初恋未満だった、まもる君の姉ちゃん
毎年、夏の暑さが過ぎ始める頃に思い出す女性がいる。
名前は覚えてない。
覚えているのは、笑った顔とまもるという名前の弟がいたのと当時の後悔。
僕が昔住んでいた場所は周りがマンションや社宅ばっかりだったこともあり、近所には小学生がたくさんいた。
近くには『なかよし公園』という名の小さな公園があり、なかよし公園に行くと必ず近所の誰かが遊んでいた。
夏の夜には近所の子達で肝試し大会をしたり、花火をやったりととにかく近所の子達は皆仲が良かった。
そこにはまもるの姉ちゃんもいて、まもるとまもるの姉ちゃんともよく遊んでいた。
昔の僕は男女問わずに仲が良いことを変にも思わなかったし、女の子と話したり、遊んだりすることに人の目を気にすることはなかった。
ある時、まもるの姉ちゃんとお馴染みのなかよし公園ではない公園に二人で遊びに行った。
違う公園と言っても、道路を挟んだ向かいの大きな公園だった。
その公園で何をして遊んだかも、何を話してたのかも、どうしてなかよし公園ではない公園に行ってしまったかも全く覚えてないが、帰り道にまもるの姉ちゃんをおぶって、道路を渡り、なかよし公園に帰って来た時に、遊んでいた近所の他の子供たちに冷やかされたことを覚えている。
まもるの姉ちゃんとのプチ遠出に嬉しくて浮かれてた僕に『まもるの姉ちゃんのこと好きなの?』『おんぶしてあげるとか恋人みたい』などとまるで裏切者を吊し上げるかの如く、容赦ない冷やかしの言葉が浴びせられた。
僕はまもるの姉ちゃんに対して好きのような気持ちが芽生え始めてたため本当に恥ずかしくて、必死で否定した。
否定する僕を見てまもるの姉ちゃんが悲しそうな顔をしていたような気がする。
なかよし公園という聖域では許されていたことでも、一歩出てしまうと許されなかった。
僕はこの件以来、まもるの姉ちゃんを避けるようになった。苦しかったけど、冷やかされるよりはマシと思えていた。
しばらくしてまもるの姉ちゃんは引っ越した。
どこに行ったのかも知らないし、引っ越すことも知らなかった。というか、知らされなかった。
初恋未満のような恋ではあったが、周りの目を気にするあまり自分に正直になれなかったことに後悔を感じた。
今、再会出来たならあの時のことを素直に謝罪し、お詫びにクンニをしてあげたいと思う。